塗り工程の詳細

塗り工程とは…ここでは漆を塗る作業の事を指します。
ですが、漆を塗ると言っても単に木に直接、漆の液を塗るのではなく、塗るにあたっては様々な工程が必要になります。漆は樹液を活用した唯一の天然塗料と言われ、扱うにあたっても大変デリケートなものです。漆独特の特性をよく理解し、作業しないとすべてを台無しにしてしまうほど作業工程は難しいものであり、先に解説した木地工程や後に解説する金箔工程を生かすもころすも塗師屋まで・・と言われるほど仏具製作には重要なものであります。

2塗り工程

1. まずは下地作業から。漆を直接、木にぬると木がその漆を吸い込んでしまいます(その特性を生かした塗り技法もございます)。なので木が漆を吸い込まないようにまず下地を作ってやります。下地には半田(泥)地と胡粉地(ごふんじ)と言う二種類の下地を使用します。半田地とは砥粉(とのこ)と膠(にかわ)を混ぜ合わせたもの、 胡粉地とは半田地に使う砥粉より粒子の細かい胡粉(貝殻の粉)と膠を混ぜ合わせたものです。写真はその胡粉と膠を練り合わしているところです。

2. 胡粉地を桧ヘラを用いて漆を塗る部分に付けていきます。
この時、肉付が厚過ぎるとひび割れを起こしたり、彫刻が埋まってしまいます。逆に薄すぎると木目(やせ)が出てしまう事もあり、長年の感が物を言う大事な作業になります。

3. 札の部分(文字彫刻を施す部分)には胡粉地のみを仕様します。
理由としまして半田地に使用する砥粉の粒子が文字を彫刻する際、彫刻刀をすぐに切れ止ますため、文字を彫刻する札部分には砥粉より粒子の細かい胡粉(貝殻の粉)を使った胡粉地のみを使用します。そうする事により彫刻刀の切れ味が長持ちするためそれを使用します。ですので札部分は少し厚めにヘラ付けします。

4. ヘラ付けが終わると下地の研ぎ作業に入ります。
水分を含ました砥石やペーパーで彫刻部分や平坦箇所をムラなく手早く水砥ぎします。この研ぎ作業がまた重要でして、彫刻が下地で埋まってしまうと木地工程の彫刻等が台無しになってしまいます。木地彫刻と変わらないよう丁寧に研いでいき仕上げます。

5. 胡粉下地作業終了。

6. 胡粉地砥ぎが終わるともう一度、今度は台座の平面や角に半田地を付けていきます。
写真は砥粉と膠を混ぜ合わしているところ。胡粉地は白色に対し半田地は茶色の色をしてます。

7. 一回の下地ではどうしても角部分などが出しにくく、またこの作業によりこれから塗ります漆の
剥がれにくさの強度が増します。半田地のヘラ付けが終わると、もう一度胡粉地と同じように水砥ぎ作業に入ります。これで下地工程から塗り工程へ入っていきます。

8. 漆塗り工程には中塗と上塗があります。
中塗とは上塗を施すのに先立ち、上塗の仕上がりを一層良くするために行います。漆をテレピン剤で薄め漆刷毛という専用の刷毛で塗っていきます。塗り上った品物は漆室に入れ1日〜2日間、乾燥させます。

9. 乾燥後、今度は駿河炭や砥石などで中塗面を水砥ぎしていきます。
その研ぎには上部の写真にもある駿河炭という炭の木目の部分で研いでいきます。炭は弾力がなく適度に水分を吸収するため、鋭く平滑に表面を研ぐことが出来ます。耐水ペーパーなどを代用されることもあるのですが炭に勝るものはなく、こだわって駿河炭を使用しております。

10. 中塗面を一度研ぐということ事は、平坦にする事だけではなく、次に塗っていく上塗漆の密着を良くするためでもあります。

11. そして最終工程の上塗に入ります。漆はほこりなどが少しでも着いてしまうとそこに漆が集まってしまいます。なので上塗工程は近辺を綺麗に掃除し、それから塗り作業に入ります。また上塗漆は気温・湿度によって仕上がりが変わってしまうため、その日にあった漆の質を的確に掴み、漆の粘度を調整します。余り刷毛目が立たないよう、むっくりと塗り、その日に合った温度と湿度にした漆室にもう一度入れ、1日〜2日かけて乾燥させて、完成。

塗り工程終了

写真は櫛型三重座位牌

続いて金箔・ぬぐい粉工程へと進みます。

3金箔・ぬぐい粉工程

ぬぐい粉とは

京都独特の技法であり、通常は漆塗りの上に直接金粉を蒔くことが多いのですが、ぬぐい粉は金箔を押して乾かした後、その金箔の上にもう一度、箔押し漆を塗り金粉を蒔く工程の事を言います。

金箔・ぬぐい粉工程を詳しく見る

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